連立時代に入って初めての国政選挙となった参議院選挙は七月二十三日に投票が行われ、自民・社会・さきがけの連立与党の敗北、新進党の躍進という結果に終った。この選挙によって「社会党政権反対」「村山政椎不信任」の国民の審判が明確に下ったにもかかわらず、敗北した連立与党は選挙前に自らが国民に示した「与党二党で七五講席の改選議席維持」の共同公約を弊履の如くに投げ捨て、「村山政権続投」を決めてしまった。またしても国民の審判とは全く逆の政権が存続することになり、議会主義−政党政治の度し難い矛盾が現出することになった。しかし、こんなことはむしろ項末なことで、より重要なことは今度の参議院遺挙で投票率がついに過半を割り込み、たった四四%しかなかったことの方である。
戦後デモクラシーは伝来固有の正系の統治原理ー「国体1=君民共治」に違背するものだが、これに加え戦後デモクラシーはついに自らがその拠って立つ原理的正統性をも自ら喪失するに至ったのである。これは即ち今日の議会主義=政党政治が「党賊」であるのみならず、全くの「私党」の類いでしかないことを明確に意味している。戦後デモクラシーはついに自ら墓穴を掘ったと断ぜざるを得ない。
さて、社会・さきがけの惨敗によって今後「自民党−新進党」の二大政党制への移行が不可逆的な趨勢となった。しかしこの二年間の連立時代の経験に照らして現在の所謂「ねじれ現象」を抱え込んだままの二大政党制への転換であるならば、二大政党制は国民にとって間違いなく百害あって一利もないものとなろうし、無節操な党争内訌に明け暮れすれば政党政治は間違いなく自滅することになるであろう。そしてたとえ「ねじれ現象」が解消されて政界の再・再編が実現したとしても、それによって出来上がるのは「ポツダム綱領総翼賛体制」でしかないのである。
先の「謝罪・不戦国会決議」強行採択で如実となったように、今や既成議会政党は悉く亡国派−党賊と化しているのであり、亡国派に代わる興国派の総結集−維新革命党の建設は緊喫の急務となっているのである。
原理的正統性を失った政党政治
今度の参議院選挙を総括するならば、以下のことが言えるであろう。
まず第一に、自民・社会・さきがけの連立与党が敗北し村山政権が国民審判において不信任された点である。選挙前の改選議席数は自民党が三三、社会党が四一、さきがけは一であった。そして与党三党は選挙前に「新三党合意」を締結し、与党執行部はこの新合意を「共同公約」とし、「与党合わせた獲得議席で連立政権の信を問う」という姿勢を明確にしていた。つまり社会党の大幅後退が予想される中、たとえ社会党が惨敗しても自民・さきがけ両党で社会党の負け数を補うことができれぱ、村山政権の責任は回避できるというのであった。
しかし結果は、自民党は四六議席で改選議席数は上回ったとは言え河野執行部が目標としていた五〇議席を大きく下回った。社会党は党勢凋落の中改選議席数の約半分の二二を目標としていたが、それさえ大幅に下回る史上最低の一六に留まった。
一方国政選挙初参加となったさきがけは大量のタレント候補を擁立したが、獲得目標の五を下回る三議席しか獲得できなかった。結局、社会党の惨敗によって与党三党が目標ラインとしていた「七五議席」を大きく下回り、与党合計で六五議席しか獲得できなかったのである。各党とも執行部が明示していた獲得目標に達せず、そして連立与党全体として公約していた数に遥かに及ばなかった以上、与党各党が敗北を喫しただけでなく、連立政権自体が国民によって不信任されたと見るべきなのである。社会党の惨敗及び連立与党の敗北を受け、村山は一度は辞意を漏した。議会政党政治の公理に従えば、これが当然の採るべき途だがしかし村山は直ちに前言を翻し、連立与党は首脳会談で「連立与党全体で参議院の過半数を維持できた」からという庇理屈をつけて、村山続投を決め込んだ。
政治家が自らの発言や公約を守らず結果に責任を負わないことがまたしても再現され、再び国民の審判とは全く逆の政権が存続することになった。これでは何のための選挙であったか国民が不信を抱くのは当然で、議会主義−政党政治の最低限のルールがまたしても政党自体によって蹂躙された点を見逃してはならない。第二は、国政選挙初陣の新進党の躍進によって今後政局が自民党と新進党の「保守二大政党制」へ収れんする可能性が明瞭になった点である。
昨年十二月紆余曲折を経て旧連立政権の八党・会派が合同して結成された新進党は、初めての国政選挙となる今回の参議院選挙において、自民党と並び立つ二大政党の一翼となりうるかどうかが問われていた。
もし自民党と比肩しうる議席数を獲得することができなければ、八党・会派の寄り合い所帯でガラス細工とヤユされ、そうでなくとも野に下って求心力が低下している現状で、その結党はたちまち分解し四分五裂に陥るのは必至であると見られていた。結果は改選議席の倍増以上の四〇議席を獲得し、自民党と比肩しうる大政党としての存在を示すことに成功した。
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