新たな戦争を国家自立へ転化せよ

平成14年04月

新たな戦争を宣言した「悪の枢軸」発言

 アフガニスタン戦争の圧勝を受けて意気挙がるアメリカ=ブッシュは1月30日議会で一般教書演説を行い、大量破壊兵器の開発よって米国と同盟国に脅威を与えようとしている国家として北朝鮮とイラン、イラクを「悪の枢軸」と名指しして非難、今後この三国に絞って世界的規模でテロとの戦いを継続していくことを宣言した。ブッシュ大統領が北朝鮮、イラク、イランの三国だけをわざわざ名指しして警告したのは、この三国が生物化学兵器所や核兵器開発などに狂奔しているだけでなく、テロ組織アルカーダなどを陰に陽に支援し国際テロの策源地となっており、また北朝鮮がミサイル技術などをイラク、イランに輸出しこれら三国が相互に連携してアメリカに挑戦しようとしているためである。特に北朝鮮についてはその名を真っ先に挙げ、「国民を飢えにさらす一方で、ミサイルと大量破壊兵器で武装しようとしている」と手厳しく批判した。
 アメリカ大統領の一般教書演説と言えば、単に国内向けの施政方針に留まらず世界の覇権国として全世界に向けた世界政策の強烈なアピールでもある。そうした場でブッシュは「テロとの戦いは始まったばかりだ」と述べ、北朝鮮とイラン、イラクを「悪の枢軸」と名指し反テロ戦争の次の目標として明言したのである。「悪の枢軸」というのは言うまでもなくレーガンが旧ソ連を「悪の帝国」と呼んで大軍拡競争を仕掛けて崩壊に追い込み、第二次世界大戦で日独伊三国を「枢軸国」と呼んで壊滅させたアメリカの二つの栄光の戦勝に因んだ名前で、この命名からみてもブッシュの決意は断固として本物と言って良く、したがって「悪の枢軸」発言は新たな戦争を宣言したも同然なのである。特に今年は秋に中間選挙を控えており、これに圧勝して二年後の大統領再選を果たすためにもブッシュは反テロ戦争にまっしぐらに邁進して行くことは確実となった。
 この一般教書演説で「悪の枢軸」と名指しされた北朝鮮とイラン、イラクは勿論猛反発。まず真っ先に非難された北朝鮮は「これは事実上我々に対する宣戦布告と変わらない。アメリカこそ悪の帝国だ」激しく反発。金正日は「戦争には戦争を以て対峙する」と真っ向からアメリカと対決する姿勢を明確し、連日軍隊を督励して臨戦態勢の確立に血眼になっている。イランはハタミ大統領が直接「ブッシュ大統領の演説は好戦的でありイラン国民に対する侮辱である」と強く反発。特にイラクは「攻撃の口実作り。我々はアメリカを撃退する」とこれまた対決姿勢を鮮明にしている。
 しかしその一方、例えばイランは亡命中で対米戦争を鼓吹しているアフガニスタンのヘクマチュアル元首相を国外追放処分にし、「アフガニスタンから逃亡したアルカイーダも兵士を匿っている」と非難されるや「国境が長すぎて警備が不可能だ。この問題で助けて欲しい」などとアメリカに哀訴している。北朝鮮も激烈な反米キャンペーンを繰り広げる一方で、国連大使が「対話と交渉による解決を望んでいる」などと米朝協議再開を強くにおわせ始め、イラクに至っては二年間拒絶していた国際原子力機関による査察を突如受け入れ、更に頑強に拒否してきた国連大量破壊兵器廃棄特別委員会の査察についても受け入れを検討したいと国連事務総長に申し入れている。表面上の猛反発とは裏腹にこれら三国が如何にアメリカの強硬姿勢を深刻に受け止めているかが解ろうというものである。
 しかしアメリカは理念の国であり、原則の国である。一旦表明した原則は梃子でも曲げない。特にブッシュ政権はクリントン政権のこれらの国々に対する無策が今日までの三国の増長に繋がったとして、「悪の枢軸」政策に転換したのである。掲げた目標は断固として戦取するのがこの国の常なのである。ではアメリカはこの三国のうちどこから先に手を付けるのか。まずアメリカはイラクを一番最初に叩くと思われる。ブッシュ大統領には湾岸戦争でイラクを討ち漏らしたという親父の遺恨もある。今度こそ本気になってイラクを締め上げ親父の仇を討つであろう。そのイラクは湾岸戦争直後国連決議で全面経済制裁を科されていたが、その後人道物資購入に限定して石油輸出を認める「石油輸出プログラム」に緩和されている。このプログラムは半年毎に更新され、昨年11月29日にそのプログラムの6カ月延長が国連安保理で決まったばかりである。したがって多分ブッシュは次の期限がやってくる5月下旬を目途にフセインに対して、査察を受け入れるかそれとも石油輸出全面禁止かという二者択一の最後通告を突き付ける公算が高い。イラクを落とせば隣のイランは孤立して丸裸も同然となり、何もしなくとも音を上げるであろうから一石二鳥にもなる。
 これを裏書きする様に、ここに来て急に「5月対イラク開戦」説がアメリカから流れ始めている。パウエル国務長官は6日の米下院外交委員会公聴会で、悪の枢軸発言について「単なる言葉上の問題でなく実態ある政策のことだ。その点で政権を支える全員が一致している」と述べた後、イラクについては「国連決議の大量破壊兵器廃棄特別委員会の査察を即座に受け入れなければならない」と述べ、イラクがその問題で国連と対話する用意があるとしている点についても「話し合いの段階でなく即座に受け入れるべきだ」と、問答無用の要求であることを明らかにしたうえで、更にフセイン政権打倒こそが現政権の目標でありアメリカだけの単独軍事行動もありうることを示唆した。パウエル長官のこうした強硬発言は大統領の「悪の枢軸」発言後、ラムズフェルド国防長官らが強めている先制攻撃論と符合するものだ。そのラムズフェルドは2月1日に新国防戦略を説明した際「テロとの戦いでは最大の防御は攻撃にある」と述べており、ウォルフォウィッツ国防副長官も翌日、「イラクのような国は米国だけでなく世界にとっても危険だ。攻撃される前に予防措置としての先制攻撃も考慮しなければならない」と先制攻撃こそが有効なテロ対策であると強調している。これらの発言などからアフガニスタン後の第二段階としてイラクを反テロ戦のターゲットにする点で政権内の意見がほぼ一致したことは確実であり、ニューズ・ウイーク誌(一月二十八日号)は政府高官の話として「サダムに国連決議の順守(査察)を突きつけその間に準備を整える。たぶん6カ月から18カ月後がその時期になるだろう」と伝えている。
 イラクのフセイン大統領は「悪の枢軸」発言後、アラブ連盟を仲介者として国連に対話再開を提案した。これを受けて3月7日サブリ外相をトップとするイラク政府代表団がニューヨークの国連本部を訪れアナン事務総長と会談することになっている。この会談では当然国連査察の問題が話合われるとみられるが、アメリカは「1年中、24時間体制の抜き打ち査察」をイラクに要求しており、イラクがこの要求を飲めるか否かがまずは当面と焦点となろう。


「対北朝鮮開戦」準備のためのブッシュ東アジア歴訪

 アメリカは中東で対イラク開戦の機会を周到に準備すると共に、もう一つの「悪の枢軸」北朝鮮に対しても断固たる強硬姿勢を際立たせ周到に開戦準備に着手し始めた。ブッシュ大統領は2月17日から日本、韓国、中国と順次東アジアを歴訪したが、これこそ対北朝鮮開戦準備のための戦争行脚であったのである。ブッシュは東アジア歴訪の直前、「北朝鮮が透明性を高め大量破壊兵器の拡散をやめない限り、最悪のことを想定するしかない」などと述べ、今度の歴訪が北朝鮮包囲網の形成にあることを明言した。大統領の発言のトーンは、北朝鮮などを「悪の枢軸」と指摘した一般教書演説から全く変わっておらず、アメリカは北朝鮮が査察受け入れを拒否する事態も想定しその場合軍事行動も辞さない決意を明確にしたのである。
 そして第一の訪問国日本では、日米首脳会談で「アメリカの東アジア政策の基盤」としての日米同盟関係の重要性を確認し、「日本重視」の姿勢を改めて強調。小泉首相から「長期的な反テロ戦」への支持や、「悪の枢軸」と名指しした北朝鮮、イラク、イラン各国への強硬姿勢に対する幅広い支持をとりつけることに成功した。特に北朝鮮に対しては「核・ミサイル」のみならず「通常兵力」を含めて「一括協議」の再開を要求していくことで日本からの支持を調達することに成功したのである。そして北朝鮮がこれらアメリカの諸要求を拒否し半島情勢が危機に陥った場合、日本がアメリカの北朝鮮攻撃に兵站基地として全面的に協力すること、そのため日本が有事法制・緊急事態法制を早急に整備することについても全面的協力を取り付けたのである。欧州諸国がブッシュの「悪の枢軸」発言に関して一斉に批判的な声を上げ米欧同盟に亀裂が走っている折でもあり、世界第二の経済大国である日本の支持はアジア・世界戦略上欠かせない以上、日本から全面支持の言質を取り付けたことはアメリカにとってまさに百人力であったと言えるであろう。こうした成果に踏まえ共同記者会見でブッシュ大統領は「世界のリーダーは米国の決意が強固で、(反テロ戦が)アフガニスタンだけにとどまらないことを理解している」とまで日本を持ち上げ、「長期的な反テロ戦」に日米が同盟的結束を以て臨んでいくことを高らかに宣言したのである。
 ついでブッシュは韓国を訪問、金大中大統領との首脳会談に臨んだ。首脳会談後の共同記者会見で金大中は結果について「満足している」と述べ、課題として設定していた(1)韓米同盟関係の強化(2)テロ根絶に向けた協力(3)北朝鮮のミサイル・大量破壊兵器問題の解決(4)対話による問題解決−で米韓双方の意見が一致し「ブッシュ大統領は強い対話の意思を表明し戦争は望まないと語った」と強調した。これに対しブッシュは「北朝鮮はまだ韓国の太陽政策を受け入れていない」と金大中政権の対北政策の成果に否定的な見解を示し、金正日総書記についても飢餓や自由抑圧など独裁状況に触れたうえで「北の住民たちに愛情を見せるまで見方を変える考えはない」と強い不信を表明、金大中の太陽政策を真っ向から否定したうえで、逆に一般教書演説と同じ表現を使って金正日を非難しアメリカの「悪の枢軸」発言が戯れでないことを明確にした。米韓の対北朝鮮認識は完全に齟齬を来した訳で、金大中の太陽政策の破産はこれで一目瞭然となったのである。アメリカは最早金大中の太陽政策を相手とせず、年末行われる大統領選挙後の新政権と対北朝鮮政策を摺り合わせて行く算段なのである。
 むしろアメリカの断固たる決意はその予後のブッシュ発言に明瞭であろう。ブッシュは北朝鮮とはまさに指呼の距離にある非武装地帯(DMZ)近くの都羅山駅での演説で、北朝鮮を「世界で最も危険な政権」を言い放ち「金正日に対する考えは彼が姿勢を改めるまで変わらない」とまで断言し、今後も北朝鮮の人権問題、体制閉鎖性を問題としていく姿勢を改めて明瞭にした。ついで板門店近くの米軍基地を訪れ三八度線からわずか百メートルの監視地点にまで近づき、双眼鏡でDMZの北朝鮮側をのぞき込み将兵を前に「われわれは用意ができている」と傲然と宣言したのである。これをみればアメリカの決意が奈辺にあるかが解るであろう。
 韓国を後にしたブッシュは最後の訪問国中国に向かい、江沢民国家主席との米中首脳会談に臨んだ。ちょうど「ニクソン訪中」三十周年の日にセットされたブッシュ大統領の中国訪問は、中国指導部にとっては米国との協力関係を確認し今秋の指導部交代後も対米最重視路線は不変であることを内外に示す絶好の機会であった。ブッシュ政権発足後のこの一年、米中関係は就任直後の対中強硬・台湾擁護姿勢、四月の米中軍用機接触事件などでギクシャクし、昨年九月の同時テロ事件をきっかけに漸く米中関係は改善に向かい、上海で十月に開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)での米中首脳会談でやっとほぼ完全に修復された。しかし中国国内では軍部を中心に依然ブッシュへの批判が根深く暗流しているのも事実である。そのため中国指導部は対イラク政策、台湾問題や人権問題など具体問題の対立点で歩み寄る気はさらさらなく、ブッシュ大統領の訪中自体に意義を置いていた。中国は念願の世界貿易機関への加盟を果たしたばかりであり、また6年後には国威を賭けた北京オリンピック開催を控えそして今秋開かれる第十六回共産党大会で胡錦濤を中心にした第四世代に交代する予定で、アメリカとは事を構える余裕などなくアメリカとの協調路線が不可避の命題になっているからである。そのため江沢民主席は首脳会談後の共同記者会見で「われわれは平和な国際環境を必要とする」と述べ、対米協調路線の継続を明言しそのハイライトとして自らの今秋訪米と後継者胡錦濤の訪米を演出してみせたのである。
 これに対しブッシュは両国が容易に合意できないことが明らかな問題を深追いすることを避けながら、その一方「台湾関係法」の堅持表明や中国でのキリスト教をはじめ信教の自由拡大など、中国のアキレス腱とも言うべき問題について神経を逆撫でするかの様にかなり踏み込んで原則的意見を明確に表明した。また清華大学で行った演説では一党独裁制への批判や教科書批判、キリスト教的価値の普遍性について、自由を重んじるアメリカとアメリカ人の価値観、生き方を中国の民衆へ直接説く異例なしつこさであった。そしてアメリカが当面の課題として最も重視している「反テロの戦い」に関しては、ブッシュが首脳会談で「アメリカと北朝鮮の対話再開支援」を江沢民に要請したのに対し、江沢民は明確な返答を避けて態度を保留した模様である。「悪の枢軸」と名指しされた北朝鮮もイラクやイランもみんな中国と同盟関係にあり、中国自身アメリカに対抗して将来の世界覇権を展望している以上、アメリカからすればこの最も重要な問題における中国側の隔意は当然今後アメリカの対中政策に投影されることは必至となろう。対イラク開戦が5月にも迫ろうとするなか常任理事国としての中国のイラク査察再開に関する態度がまず問題となろうし、次に北朝鮮問題で中国が今後どう動くか米中関係のみならず東アジア情勢は波乱含みの展開が必至となったのである。


新たな戦争を国家自立へ転化せよ

 すでに見てきた様にアメリカの反テロ戦争の決意は本物である。「悪の枢軸」と名付けられたその名前がアメリカの揺るぎない意思を表象しているのである。アメリカは第二次世界大戦で日独伊三国を「枢軸国」と呼んで完膚なきまでに壊滅し、続いて冷戦では最後にレーガンが登場しソ連を「悪の帝国」と呼んで無制限の軍備競争を仕掛けて破滅に追い込んだ。「悪の枢軸」と名指しされた北朝鮮、イラク、イランの三国は日独伊三国や旧ソ連に比べれば取るに足りない小国であるが、それでさえアメリカは「悪の枢軸」と呼称し眦を決して立ち向かおうとしている。アメリカの反テロ戦争の決意は本物なのである。アメリカは勿論一方で「平和的解決」のドアーを開けている。しかしそれが閉ざされた時は断固として「あらゆる選択肢」を行使するであろう。それもまずイラク、早ければこの5月にも開戦の火蓋が切って落とされるであろう。そしてその次は間違いなく北朝鮮で、その時期は韓国の大統領交代を睨んで来年中であることも多言を要しないであろう。
 そしてこの「悪の枢軸」との戦争で最も窮地に追い込まれる国は日本と中国であることも既に述べた通りである。日本は平和ボケの「小日本主義」の故に、中国は「悪の枢軸」と実質的に同盟しておりアメリカの世界戦略再編と真っ向から衝突するが故にである。しかしこの両国の窮地はアメリカでブッシュ政権が誕生した時、そもそも既に決定付けられていたのである。同時テロはただそれをより劇的により決定的にしたに過ぎない。周知の様にアメリカ=ブッシュの戦略転換は「文明の衝突」と「アーミテージ報告」を下敷きとするものであった。「文明の衝突」は今世紀に於いて「儒教=イスラムコネクション」がアメリカ的キリスト教的価値観に対する最大の脅威として出現することを予見し、これに対抗して封じ込めようという戦略である。具体的には急台頭する中国や北朝鮮が中東イスラム教国に兵器、ミサイル、核兵器技術を輸出し、中東イスラム教国がその武器を使って欧米キリスト教国に挑戦するというものである。昨年9月の同時テロは正にこの予見が早くも的中するものとなり、それ故にアメリカは北朝鮮、イラク、イランを「悪の枢軸」を名指しして反テロ戦争の完遂を宣言したのである。したがって「悪の枢軸」との戦争は究極的にはこれら三国を庇護する中国との決戦を当然に意味することにもなる。
 一方もう一つのテキスト「アーミテージ報告」は経済成長をバックに近代軍備を急拡大し続ける中国が台湾海峡や朝鮮半島の不安定な情勢の策源地になっているという認識、及びその中国が遠くない将来(2025年頃)必ずやアメリカに対して脅威をおよぼすことなるという予見の下、我が国をアジアで唯一信頼可能な死活的な同盟国と位置づけ、日本との同盟関係を全面的に強化し強力な日米同盟を以て急膨張する中国に対峙するという戦略である。そして日米安保同盟強化の為、日本に対して「集団的自衛権の行使」「憲法改正」まで要求するのである。これをこれまでの「バードンシュアリング」という言葉に代えて「パワーシュアリング」という新概念で表現している。今度のブッシュ訪日ではここまでの要求がなかったが、アメリカが将来に亘ってこの戦略を追求してくるのは間違いないのである。
 さて翻って戦後日米関係を回顧するならば、有為変転の一語に尽きる。最初アメリカの対日政策は「弱体化」であり、そのため占領憲法を押し付け9条で旧敵国の軍事的封殺を図った。しかし間もなく冷戦が始まると「反共防壁化」政策に転じ、一転再軍備を容認し日米安保条約を締結した。その日米安保条約も双務的ではなく片務的であった。「弱体化」も「反共防壁化」も日本自らの選択ではなくアメリカの他律的要請であったため、常に反米の契機が間欠的に爆発しそれが敗戦国という屈辱と相俟ってナショナリズムを徒に刺激してきた。ここから「反米」と「小日本主義」という二つの病理が胚胎した。しかし講和以降は日本は紛れもない独立国で、憲法9条の改正を拒否し片務的同盟に甘んじ「小日本主義」に固執して来たのはむしろ日本の歴代政権の方であったのである。アメリカは冷戦時代を通じて一貫して憲法9条の改正を要求し、更にここに来てブッシュ政権の戦略転換では単なる「バードンシュアリング」に留まらず「パワーシュアリング」まで要求してきているのである。我が国は建国の大正義に立脚して今後世界の諸民族を領導して「世界史的世界国家」を建設するのでなければならず、そのためには「小日本主義」の戦後的宿痾を清算し「大日本主義」の国是を不動の世界戦略とするのでなければならない。その一階梯として「小日本主義」から「中日本主義」への転換は当面日本の必至の課題となっているのである。唯一の超大国として傲然世界に君臨するアメリカと雖も、しかしその実態は今や我が国の助力無くして最早世界経営が不可能なまでに弱体化し、一方わが国は戦後的宿痾を清算し栄光の大東亜戦争の遺産を全一的に継承して再び世界史の全面に踊り出るべく運命付けられているのである。同盟とは国運益々盛んなる国と国運衰亡に傾く国との当面の利害の一致の所産である。自らに課せられた天啓的使命を忘却して何ぞ「反米」と言い「小日本主義」と況わんや。
 冷戦崩壊とそれと踵を接して起こった自民党の大分裂以降のこの10有余年、我が国の政治は「小日本主義」か「中日本主義」かを対抗軸として激しく揺れ動いてきた。しかし、度重なる政党の離合集散、連立政権の組み替えにもかかわらず、一度として理念や基本政策に基づく政界再編が実現されることなく、「護憲・安保反対」の「小日本主義」と「改憲・安保強化」の「中日本主義」の激しい綱引きが続いており、今以て国論の完整を見るに至っていない。その結果が現在の「失われた10年」の無惨でなのである。そして今また小泉政権の末期現象とともに戦後党賊どもは再び色めき立って無益な党争を繰り広げようとしている。
 しかし国運は自ら赴くべきところに帰着するのが世界史の公理である。一度灰燼に帰した日本はこの天啓あるが故に旭日昇天の復活を遂げ、これに徴するかの様に湾岸戦争以降この10年、「小日本主義」か「中日本主義」かの対抗は圧倒的に「中日本主義」に傾斜し今やその圧倒的優位は揺るがない形勢にある。この天啓に唾して「小日本主義」に執着して国運発展を妨害してきたのは誰あらん戦後党賊どもなのである。議会が国民世論を全く反映せず亡国政党の跋扈する所と化し、そのサボタージュによって最早立憲的改憲が不可能となっているとするならば、天啓の命ずるまま世界史の公理に棹さして超憲法的改憲の非常権を発動してこの日本を救う他はないのである。
 加えて戦争の危機が切迫しているにも拘わらず現行憲法には有事・緊急事態に関する規定がなく、それを補完するために有事法制整備が焦眉の課題となっているにも拘わらず、これまた議会政党は「小日本主義」か「中日本主義」かの亡国的党争に明け暮れして帰する所を知らない有様である。議会政党が国民の信託を蹂躙し国民の生命財産保護の責任さえ全うしようとしないとするならば、最早最後の最後の手段として「非常は法を知らず」の法諺に則って行動するより他はないのである。非常時革命権の法理はここにおいても正統化されうるのである。
 革命は古今東西みな「一民族の一体的復活の為に其の命を革めんとする躍動」であり、すべて「国家非常時における権力の強制的交代」である。戦後党賊どもが「国体・国史・国益」を蹂躙し国運の発展を妨害するならば、今こそ「一民族の一体的復活の為に」に決然立ち上がらなければならない。時恰も戦雲渦巻く国家非常時である。「非常は法を知らず」、今こそ自ら国家主権を発動し国家を救済しなければならない。国家は戦争の業火を通じてのみ蘇生し得るのである。新たな戦争を国家自立へ転化せよ!



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