辛口コラム
書評その86
出生率0・78 海外脱出が750万人という韓国の実態
なぜ「自己チュー」の国がこれほど体たらくになったのだろう

著・呉善花 『韓流映画・ドラマに見える下剋上の韓国』(ビジネス社)

『韓流映画・ドラマに見える下剋上の韓国』

 まず若者に人気がある映画・ドラマの「パラサイト」「愛の不時着」「イカゲーム」「SKYキャッスル」などが俎上にの載せられ、その超ストレス、差別、貧富の格差、詐欺の横行、そして学歴社会の底流にある文化的要素の考察が重なる。
 韓国人のストレスは1997年、IMFショック、株価大暴落から始まった。これにより『人生観が変化した』という韓国人が58%にのぼった。映画『82年生まれ、キムジョン』は、この激変を下敷きであると呉善花教授は言う。
 インチキ宗教やら詐欺が横行した。
 信仰をもつ韓国人は53%とされ、そのうちキリスト教が56%、仏教は43%という統計がある。ところが韓国社会の底流でひとびとのモラルを律しているのは儒教の掟だという。
男尊女卑、男子を産まない嫁は虐められる社会だ。
 日本人が到底思いつかない社会的規範が「本貫」という制度。「父系の先祖の発祥地に拠って分けた。(中略)男子単系の血脈で構成された血縁集団『宗族』が違う」という意味である。それが姓名に象徴される。
 日本は佐藤、鈴木、高橋などが多い名字だが、それでも全体の2%にも及ばない。
 韓国では「金、李、朴、崔、鄭の五大姓が突出する。ちなみに「金」姓が全人口の22%、「李」姓が15%だという。
 これが結婚の掟を左右し、同姓の結婚はない。
 OECD平均は1・59が出生率の統計調査だが、韓国の其れは0・78とOECDのなかで最悪である。
くわえて韓国に住みたくないとして「海外脱出」が750万人。なぜ「自己チュー」の国がこれほど体たらくになったのだろうか。
 もう一つが極端な学歴社会である。しかも名門大学を出ても、職場でうまく立ち回らないと、出世コースからたちまち転落する。
 韓国の悲しい実情を呉教授はえぐった。

大學はでたけれど。。。

 さて、先進国共通の悩みは大學授業料の高さである。脱線するが、この問題に触れておこう。
 米国は世界最高の授業料だ。バイデン大統領が強気に二期目の出馬宣言をした背景のひとつが大學ローン返済免除プログラムだった。
 これで勝てるという打算からだ。授業料をローンで借りて、その返済のため生活に窮しているアメリカ人はおよそ4000万人から7000万人。この人たちの多くは民主党に投票する。
メディアに洗脳されてトランプを差別主義者、嘘つきと思いこんでいる。
 米国の大学授業料は高い。そのうえ駅弁大學の粗製濫造がある。日本も少子化があきらかとなっても新制大学が雨後の竹の子状態だった。これこそは文科省の最悪の愚策だが、産経新聞(23年5月24日)に依れば、すでに19の新設大學が入学募集を打ち切った。日本全国に私大は598校もある。このうちの284校が定員割れ。経営悪化が急速で立志舘(広島)、福岡医療福祉、神戸海星女児学院などが学生募集を停止した。卒業証書が就職のためのパスポートである以上、閉校とならず近くの大學に「救済合併」を待つしかあるまい。また近郊に新設した一部大学の新学部など都心へ回帰してしまったため学生下宿や学生食堂を開いて利益を当て込んだ近郊の人々は投資が無駄になって不満の爆発である。近郊の山林や農村地帯に道路を開き、近い駅から学バスを運行してまで新校舎を造ったが、若者の人口が減り(団塊の世代のピークは300万を超えていた。いまは80万人を切っている)、都心にある大學でないと志望しなくなった。
 くわえて若者の人生観の劇的な変化がある。
農村への回帰が静かに起きているが、大学を出ても出なくても起業はできる。団塊の世代は無宗教が多いので、終活人口が多いのに葬儀業者の倒産も多い。
葬式は家族葬が主流となり、山や海への散骨が増え、御墓を造らなくなった。独身者が急増しているから、この傾向はさらに顕著になるだろう。

米国下院共同決議案は年収12万5000未満の学生ローン債務を最大2万ドルまで帳消しにするというバイデン政権政策の廃案を意図した。

米国では学生ローンの返済で人生設計が狂った

グッド議員は「バイデン大統領の学生ローン移転計画は、学生ローン借り手から数千億ドルの支払いを、ローンを利用しなかったアメリカ国民の肩に移している」と述べた。つまり「返済のために一生懸命働いた人、または最初からローンを借りなかった人を不平等に扱う一方的な措置だ」と主張した。
 下院の教育・労働委員会のバージニア・フォックス委員長(共和党、ノースカロライナ州)は、学生ローン取り消しにより納税者に少なくとも3150億ドルの負担がかかると計算する。議会予算局は「大統領の融資免除計画により今後十年間で納税者に約4000億ドルの負担が生じる」と試算した。ペンシルベニア大学ウォートン校(MBAでは世界一)の調査では5000億ドルを超える可能性があるとした。
 ホワイトハウスは「反対決議案が下院と上院を通過した場合、大統領が拒否権を発動する」と暴走姿勢である。「教育省が提供する救済金のほぼ九割は年収7万5000ドル未満のアメリカ人に与えられる。収入上位5%の個人や世帯には救済金は渡されない」とバイデン政権は貧富の差を訴え、論理をすり替えた。

 日本でも学生ローン返済は大問題だ。  日本政策金融公庫の場合、学生一人の上限が350万円で固定金利1・95%である。返済は最長18年。たとえば100万円かりると、毎月の返済が9300円で、119回分割(十年で完済)となる。審査、条件が厳しいが大学教育費用無償化制度も2022年度から取り入れられた。中国人など外国人留学生に対して授業料免除、生活手当支給などという不平等是正の声が高くなったため文科省などが付け焼き刃で制定した。いずれにしても大学四年間は日本の若者にはモラトリアムとなる。社会へ出てからやり直し教育(企業研修)を経なければ役に立たない。アメリカ人の若者たちはローン返済で生活苦に陥り、結婚を諦め、マイホームは夢となった。日本もほぼ同様である。
 しかし、そうまでして大學へ行って何を得られるのか。大卒の資格があろうが、なかろうが意欲的な人間は努力を怠らず、たとい学歴がなくとも成功できる。
 大學をでなければならないとする強迫観念は戦後の繁栄の中で社会的ムードとなった。だが、モラトリアム人間を増やしただけで、これは国家的損失なのである。

waku

表紙

2000-2023 MIYAZAKI MASAHIRO All Rights Reserved